蒙 六三

義理易
kr

蒙卦の六三に、

勿用取女。見金夫。不有躬。无攸利。
女を取るに用うるなかれ。金夫を見ては、躬を有たず、利する攸なし。

とある。これが一般的な読み方なのだが、これを、

勿用取女。見金。夫不有躬。无攸利。
女を取るに用うるなかれ。金を見て、夫は躬を有たず、利する攸なし。

と読むパターンがある。これは、高亨の「周易大傳今注」の読みで、解説を見ると、

「金」というのは銅のことで、黄金ではない。周初では、銅を貴重な財産としていたので、女性が嫁入りする際の結納として用いた。「夫不有躬」とは、夫が身を亡ぼすことである。占いの判断としては、この爻に遇えば、結婚してはいけない。婚約の結納の金品を見た時点で夫(となる予定の人)は急死する。いいところがない。

としている。「金」という字は、もともと「銅」のことで、金属一般を示し、金属が貴重品であることから、「金」の一字で財産一般を表している。「夫」というのは、「男性」をも示す。これを踏まえた判断をすると、何らかの話が来て、契約がまとまった時点で自分に致命的なダメージがあるから不吉とする感じである。また、何か財産のようなものが手に入った引き換えに命を失う暗示もある。
高亨の解釈の場合は、古代の風習、女性側が持参する金品が先に届くことによって不幸が訪れる。
私はこの句読を見た時に、短絡的に女性側が男の財産目当てで近づくイメージが思い起こされたのだが、それもまた、この経文から引き出される解釈の一つにすぎない。もっとも、それは象伝の、

勿用取女。行不順也。
女を取るに用うるなかれとは、行い順まざればなり。

に依るところが大きいのであるが。

実際の占いの現場では、一つの事に固執してはならず、常に柔軟な判断をしなければならない。ゆえに、複数の解釈は常に併存して、状況に応じて適宜取捨すればよいので、学術的な本来の意味があった上での、あれは正しいとか間違っているとかは意味が無いのである。従来の読みの他に、こんな読み方もあることを知っていれば判断に幅が出る。

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